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2009.06.15 『なつのような日々だ』

すでに
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梅期を通り過ぎたようなうだるような暑さの中、
実家と仕事場を往復。
てくてくと重い足取りは、与えられたミッションをひとつずつ丁寧にこなすように
二人分の一歩をかみしめる。


予定日までは2週間をきった。
「なんか早くうまれそう」と特に根拠もなく願いにも似たような気持ちで勝手な予感をしていたけれど、
やっぱり予感は予感でしかなく、
突出するように前に前に伸びたお腹の中の子が、まだ3000グラムに達していないことを考えると
結局、本来の予定日とさして前後することもなさそうだ。



前駆陣痛といわれるやつなのか、
夜中寝ているときに、ときどき腹部に痛みを感じる気がする。

でもこの痛みは、なにを作るでもなく、ただ粘土をひたすらこねているようなもので
そこに確かな手ごたえを感じるものの、その正体はこねている本人にもわからない。
それは、夏の夕方に外で集まっているもやのような小さな虫の群れのようでもあり、
上昇しているのか下降しているのか分からないぐらい超高速なエレベーターに乗っているような
そういう質の痛みだなぁと思う。

この痛みがその存在を否定できないぐらい圧倒的な形を形成し、
それが10分間隔であるという条件が揃えば
それは本格的な陣痛だと書いてあるページを何度も読んだ。
だから少しでも痛みを感じると、すぐに時計を見て、
時計を見ては、その間隔を痛みに問いかけるような
そういう夜をここ何日か経験している。


このときの心境というのは全く不思議なもので、
それが本格的な陣痛であって欲しい、という想いと
待って待って、まだ心の準備が!という尻込みした思いが交差している。
だって、赤ちゃんには早く会いたいけれど、
その前に出産という死ぬような痛みを伴う儀式を乗り越えなければならないという恐怖。
それがジレンマとなって、純粋な想いに白濁とした矛盾を孕ませているのだ。



手を伸ばせば届きそうなほどすぐ傍に素敵な未来が待っている。
だけどその前には扉が用意されていて、扉には地獄の番人がいる。
自分の足首には足枷がはめられていて、すぐには動けない。
そいつが外されるのがいつなのかは分からないが、
外された瞬間に自分の全ての力を振り絞り、全速力で扉までダッシュする。
ダッシュする…ことができるのだろうか。

番人のカッターで切り目をいれたような目は、鋭い光を放ちながらこちらを見据えている。
ぜったいに逃さんぞ、ぜったいに。
もしも、気持ちの上で負けてしまえば通り抜けることなんてできないだろう。
だからいつそのときが来てもいいように、その準備をしておかなければならない。
ちょうど短距離走のスタートラインで鳴らされるピストルの音を
今か今かと生唾を呑み込んで待ちわびながらも、
その場から今すぐに逃げ出したい気持ちを、懸命に押さえ込んでいるかのように。



そんな風景を想像しながら、くるときを待ちわびているわけだが、
私の母も、そのまた母も、叔母も、親戚も、幾人かの友人も
みんなそれを乗り越えて、(なんなら2、3回経験して)
今の生活を営んでいるかと思うと、
歴史上のどんな勇敢な戦士にも負けないぐらいの強さや忍耐力が
彼女たちには備わっているのだなぁと、こりゃもう、ひれ伏したい気分である。



それでも皆、口を揃えて「産んだあとのほうがたいへんだよ」というので
産んだ後とはいったいどんなものなのか、
死ぬほど怖い思いをして地獄の番人をやり過ごしたのに
あけた扉の先がそれ以上の地獄のようなものだったということなのか、
向こう側に、番人クラスのやつがうじゃうじゃはびこっている世界を想像して
もういったい何なのだか、よく分からなくなってくる。

だけどそういう言葉の端に必ず幸せそうな笑顔があるのを見て
いや、やっぱり地獄ではないだろうと
どこかでそれを見極めるのを楽しみにしている自分がいたり。


とにかく言える事は、腹をくくるしかないよ、ということだろう。
がんばれ、自分。
そしてがんばれ赤ちゃん。
いっしょにうんと怖い思いして乗り切ろう。

2009.06.15 『なつのような日々だ』_a0090173_18185022.jpg

写真は、なんかひそひそ話しをしていたようすの、ギズモとモグちゃん。
最近あいつ、腹でかくね?(病気?)
みたいなことをいわれてそうですが病気じゃねーよ、


さてもう少し、妊婦生活を味わうとします。
by aoi-ozasa | 2009-06-15 18:13 | Daily life
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