うちにある漫画が全て燃え焼ける夢をみた。 買ったり売ったりを繰り返して 長い間数えていないから分からないが、おおよそ1500冊はあると思われる。 パチパチと音を立てて、きな臭い香りを辺りに撒き散らし、 焦げた落ちたページの断片たちは、熱風の中で雪みたいにひらひらと舞った。 これらの物語たちが朽ちていく様は、それはもう圧巻で 私は、映画スナッチでブラッドピット演じるミッキーの、 愛するママのキャンピングカーが燃えていく様を見つめるシーンを思い出した。 激しい怒りとも静かな悲しみともとれるような表情だった。 自分もいま、誰かの視点で見れば、あんな風なんじゃないか。 だけど、燃えゆく様を一緒に見守っていたはずの母がなぜか 私の顔を見てひどく泣いているのを肌で感じて、 粟立つ皮膚の裏側で何かが死んでいくような気分だった。 そのとき私は、いったい どんな顔をしていたというのだろう。 火を伴う夢が何を暗示するのか調べる気にもなれず 寝ぼけ眼で仕事に向った。 ときどきすれ違う人を、今朝見た夢の漫画本に見立てて あの人がいま突然発火したら、周りの人はどんな顔をするんだろうか などと不吉な思いをたぎらせた。 家族は?友人は?恋人は? どんな風にそれを受け止めるんだろう でも自転車のスピードはあっという間に、妄想のスピードを超えていて その顔が浮かぶ前に会社に着いた。 いつものように休憩中に一向に休憩にならないスパイダソリティアをしながら 猛スピードで仕事を済ませたら、明日のイチに行く準備をして早めに会社を出た。 帰りに本屋に立ち寄って、幾つか本を買う。 手にした瞬間にふと、もしも今日、立て続けに火事の夢を見たら 燃えてゆく物語の中に今日のこれも含まれるのかな と思った。 本も読む。 音楽も聴く。 映画も見る。 まるで何百回も生まれかわるかのように 何百回の人生を生きるかのようにして たくさんたくさんの物語と出会ってきた。 寸分違わず、とはいかないが、何度も回数を重ねたものは まるで自分の経験談のように話すことだってできるだろう。 物語に現れる仲間たちを、心から愛し、 主人公が恋する相手を、同じぐらい強い気持ちで胸に抱き そんな風にして物語を愛しんできたものだから、 それらが全て焼け落ちる様は、まるで自分の今までの人生を持っていかれたような そんな喪失感を味わうこととなった。 全ての果てしない可能性を秘めた私の大切な友人たちが 一瞬にして赤い炎の記憶に無理やり統一されてしまう 激しく、苦しい夢だった。 それが例えば、明日の希望を打ち砕いてしまうぐらいの別れでも 目に焼き付けることで、より一層の哀しみが訪れるんだと知っていても 目を逸らすことなんて誰にも出来ないのだ。 少しでも多く、少しでも鮮やかに 心に残してゆけるように、しっかりと目を開けて見守らなければならない。 さようならの瞬間に、自分の中で間違いなく存在していた何かと対峙する。 それが例え、愛する者だったとしても、 失いたくない時間だったとしても その最後を理解することに、とてつもない抵抗があったとしても 別れを受け入れて、飲み込んで、生きていかなければならないことを きっと誰もが知っている。 そうやって皆別れを繋いで生きているのだなぁと改めて身に感じた。 どんなことにもいつかさよならがあるんだとしたら その時はできるかぎり穏やかな気持ちで、それを受け入れられたらな と思う。 私がいつかこの世を散るときも同様に、わたしの家族達に別れが優しく伝わればいい。 愛しいものたちの最後のサインを、ひとつもこぼすことなく 新しく生きていく糧として身に宿せたらなと思う。 そうして新しい出会いを心から喜んで生きる。 蓮華草の花言葉を抱くようにして、苦しみを少しずつ解放する。 形がなくなろうとも、二度と触れることができなくとも 出会ってきたものたちはいずれ自分の一部となる。
by aoi-ozasa
| 2008-02-06 00:36
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