<   2006年 01月 ( 20 )   > この月の画像一覧
2006.01.22 「脱走する」
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いつぞやか考えた

あたしの高校は単位制で制服がなかった
金髪もピアスもへっちゃらだった

本当は行こうと思った高校があった
学区内では1,2位を競うくらいの学力に
あたしはとてもじゃないけどついていけなかった
お兄ちゃんも従兄弟のお姉ちゃんも同い年の従兄弟もそこに受かった
だけどあたしはお母さんに恥をかかせて
制服もない単位制のアホ校をバカみたいに卒業した

うちの猫ちゃんは4年前の冬ごろあたしの家の近所をうろついていた
毛なんかフワフワで目はガラスみたいな翠色できっと迷い猫だった
人だかりの中で人の話をあまり聞かないおばあさんが野良猫だと言った
そこから猫ちゃんはウチの子になる

中学校は楽しかったけど窮屈だった
少しでも髪の毛の色が明るくなるとすぐに呼び出されたし、
鞄も靴も規定のものしか許されなかった
だけどあたしたちは全然言うことなんて聞かないから両親達を何度も困らせた
ルールなんてなければいいのに
そういうことしか考えれなかった


今あたしを縛るものは幾つあるんだろう
そしてそれはどれほどあたしを困らせて あたしに窮屈な思いをさせて
イライラの種になって
そしてどれほどの安心感を与えてくれるだろうか

制服がない学校に制服を着ていく
約束のない用事が気がかりで仕方がない
猫ちゃんが何度も脱走を図る
何度も携帯電話に目をやる
止めてくれる友人が居る
何もない日曜日が死にたくなる

毎日毎日同じことの繰り返しで規律だらけで体も動かなくて
それを理由にして飛び出せないようなまるで心が削られていくような
そういう思いをしたくないなぁと
そう思いつつもどこかで縛られて居たくてどこかに依存していたい自分が
情けなくて煮え切らなくて脱走したくなる

予定がいっぱいつまると息が苦しくなる
だけどいつだってそのすべてをクリアしてその達成感を感じることが出来るのに

予定が全然ないとワクワクする
これから何をしようかな、これからどんなことが出来るかな
だけど本当に欲しいものが何か分かってない人間にとっては最高に辛いものだったりもする

少し前を見ると何もないことにぞっと寒気がすることがある
だけどよく目を凝らしてみるとビックリするくらいの道が用意されていて
あたしにはそのどれをも渡っていく力がきっと備わっていて
それを手助けしてくれる人間が周りにはいっぱい居て
その一つ一つに感謝を告げることなんてとても出来ないだろうけど
時々こうやって全然難しくないことを、たいそう頭をひねって考えては
色んな事象にそっと 有難う、と思う。


残念ながらあたしは、居場所を牢獄に
支えを束縛に、そういう風にしか思えなくなるときがある
取り立てて個性もないくせに当たり前のルールを個人の主張だとか言って
逆らってしまいたくなる兆候がある
だから時々こういうことを考えては日記にしたためる必要があるんだなぁ

もう脱走したいなんか思わないって言ったら嘘だけど、
現状に満足はしているよ
少なくとも辛い理由を探すだけの人間ではなくなったようだ


うちの猫ちゃんが最近脱走を図らなくなったのは
きっとお外がもの凄く寒い所為だと思うけど
少し嬉しい
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.03.15 「ヌード」
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丸一日を化粧せずに過ごす

もともと頭髪量はきらいだから髪の毛は色剥げたカラーリングが剥き出しで
普段付けっぱなしのネイルのない爪はちょっと貧相だが、
取れかけのマニキュアなんかよりもずっと品があるのかもしれない

素顔と剥き出しのカラーとちょっと貧相だけど品を感じる爪で
服もそこら辺にあったのを着たという感じ。
だいたい週に1回はこんな日がある

そんな無防備に何処へいこうかな

って向かう先は大抵両親が働いていていずれ私が継ぐ質屋で
目と鼻の先にあるようなそんな場所へ行くのに私は毎回わざわざ車を出して、
なかなか慣れない車の練習をかねて、たった数百メートルをドライブする
音楽もかけないし、煙草も吸わない。
ただなんとなく見慣れた地元道を、走る
人通りが少ない路地なんかでは、
勢いづいてちょっとスピード出してみたりなんかして気持ちよく、
音楽の代わりになにかで覚えた変なCMソングなんかを口ずさんでみる

時々バックミラーで後ろを確かめるときに、自分の素顔を確認して、
最近もらったばかりの眼鏡は、すっぴんでかけるとなんか分相応で不釣合いだなぁ
と思って
私は普段友達に似顔絵を描いてもらうと、
まるで魔女みたいに、両目がやたらと斜め上に吊り上っているようなのに、
素顔で眼鏡をかけているとハンターハンターのシズクにちょっと似てるのかもなぁ
って思ったりもした
顔じゃなくって雰囲気がなんかちょっとヌケてしまっている感じが なんとなく


女の子に生まれてよかったなぁ
って思うときがある

こう言っちゃえば月並みだけど
昔はあれだけ男の子に憧れたのが嘘みたいに歳をとるたびにそう思う

いつまでたってもお菓子が好きだったり、嫌なことがあって洋服にもの凄くお金を使ってしまったり、爪の色を何回もやり直したり、髪の毛を長く伸ばして背中に当たった自分の髪の毛がソワソワして気持ち良かったり、部屋じゅうをいい匂いにしようとしてやりすぎたり、友達になんでも言っちゃって我ながらの羞恥心のなさに驚いたり、つまらないことですぐに泣きそうになったり、それを恋人に発見してもらえることを望んだり

そういう小さいことの固まりで形成されていることが
とても幸せだ

よくみんな、一見して男女を比較することに体系や顔や仕草や声をもってくる
ファッションだったり趣味だったり考え方で分ける人もいるのかもしれない
だけど、実際には例外がたくさんあって
そんなのどっちがどうでもいいじゃないかー って思うときすらある

昔 私が読んだ漫画で
男と女ではオデコの形が違うんだよっていうのがあって、
それはオカマを見分けるとかそういうのだった気がするんだけど、
私は、うわ、なるほどそうかぁ。
って感心した。
ああ そんな造りからして違うのか 
と可笑しい気持ちになる
どれだけ化粧して、着飾って、きれいな身振り手振りで女を強調しなくたって
そんなところでもう女なのかー

世の女の人たちは皆、そんなことは知ってるのかもしれない。
ただ、それとはまた別のところにある
キレイになりたいとか、可愛く居たいとかそういう感情で自分を 
もっともっと女の子にしているのかもしれないな
と思った

わたしは、
上目遣いの猫なで声が似合う女の子であったりとか、
マリリンモンローみたいな、女の匂いがプンプンしそうな女のひとを、
やっぱりあんまり好きにはなれないけど、

あんな女のひとが、屈託なく笑ったら、それはそれはすんごいキュートで
もし泣いたりなんかしたら、すごいセクシーなんだろうなって
それはとても分かるよみなさん

そんな彼女達とは 似ても似つかない
不細工な素顔で眼鏡の自分がなんかちょっとヌケて見えて
それを変な顔って笑う恋人や
それにちょっと敏感になったりする自分が
やっぱり女の子なのかなって思うと

それがとても不幸に思える日なんかふっ飛ばすくらいに
幸せな気持ちでいっぱいになります



きっと私は死ぬまでずっと
女の子に生まれて良かったぜ!!

って言えるくらいに
これからもキラキラしたものに情熱を注ぎまくって、
ついでにお金もつぎ込みすぎて、シワシワになって、
しかも仕事も出来なくて、ああ、あたし何やってんのって
そんな自分を悲観ばかりする日が来ても

白馬に乗った王子様如く
「きれいだよ」

みたいな一言で一瞬に幸せになれちゃいそーな
そういう気持ちを
忘れないで居たいと思います
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2005.06.01 「てんとうむしのサンバ」
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耳障りな音だった

夏の訪れを告げるかのような心地の良い夜風にまみれて
一匹の虫が一生届かない蛍光灯の光を目指しては何度も体をぶつけていた

やめてくれよ、と思う

目には見えないが、きっと小さな燐がこぼれている
それは体に毒な気がするからだ


昔何かの本で読んだことがある
羽虫は高度の下げ方を知らないのだいう
だから、バス停なんかにある低いアーチを描いた屋根の内側で、何度も体制を整えては
突き破れるはずのない天上に何度も立ち向かっていける

もう飛べないくらいに傷ついてやっと高度が下がった頃
初めて世界が自分のすぐ真下に拡がっていたことに
気付くしかないのであっても

と、あたしはそんな解釈をしてみせた


薬局で2缶800円で売っていたアースジェットは
目に鼻に喉に優しい低刺激なもの
だけどひとたびトリガーを引き抜けば、
一瞬にして小さな命を奪えるくらいの殺傷能力がちゃんとある

毒煙につつまれてその羽虫の軌道は大きく揺さぶられ
前よりももっと大きな音を立てるから 
それがより一層神経にさわる

どうせ死骸を処理しなくてはならないのだ
仕方ないなと重い腰をようやく上げて捕まえようとしたその虫は



なんと小さなテントウムシだった





途端にその命の重さがのしかかる
世にいう害虫なら一瞬のためらいもなく握りつぶせるサイズのその命が
急にとても大切なかけがえのないもののような気がしてくる

我ながら全くなんて身勝手で傲慢な感傷なんだろう
その命の尊さの教示で我が身に傷をつけられるのが嫌なだけだった

今まで 特別虫が好きでも嫌いでもなかったが
きまぐれに殺しては きまぐれに助けたことがあった
そのきまぐれさに定義はなかったけど
虫の形態や種類は大いに関わっていたに違いない

てんとうむしは小さな体を何度もぶつけて
もう殺して欲しいと懇願しているかのように見えたけど
私は傍にあったどこぞのメーカーの紙袋を虫獲り網に見立てては
何度もその軌跡の邪魔をした
飛ぶのがやっとというように高度は予測不可能なほどにバラバラで、
制御が全く効かないものだから
小さすぎて見えないけれど、多分もう体はボロボロで
さしずめてんとうむしのサンバは悲劇的だった


何度目かの旋回で
ようやく我が手中に収まってくれたその小さな羽虫を
私はおもいきり窓から投げつけた
生きているのか死んでしまったのかを分からないように、
目視することもろくにせず
その姿よ消えてしまえという意味を込めて

虫捕り網に見立てたその紙袋は、中の存在をろくに確認することもなく
クシャクシャに丸めてゴミ箱に突っ込んだ
てんとうむしのサンバなんか死ぬまで思い出さなくていいように
あたしの心が健やかでありますように


そんな風に殺されることが、あの虫のカルマだったというのなら
あたしのカルマは一体なんだろう
最後にはきっと おぞましいくらいに切り刻まれるのがいいな
一瞬で粉々になってしまってもいい
そのどれもが意味あることであるのなら

てんとうむしのサンバで
自分の死ぬときのことまで考えてしまうとは
ほんとになんだか

どうやら今日はついてない
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.06.12 「傘がない」
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♪ 都会では 自殺する 若者が 増えている
今朝見た 新聞の 片隅に 書いている
だけども 問題は 今日の 雨
傘が ない
行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ


ピーナッツバターで死んだ女性が居る
ピーナッツが彼女のアレルギーで
彼女を殺したのは
ピーナッツバターが入ったパンを 食べた後の
恋人の最後のキスだった

御伽話みたいなお話


孫のためだった
可愛い可愛い愛する子供の こども
喜ばせるものになりたかった
一瞬手元が狂った
中犬ほどもあるヘリコプターが孫の体に喰いこんで あっけないほど一瞬の出来事だった
そうだ 自分が死ねばよかった
と おじいさんは頭を垂れる

御伽話みたいなお話
御伽話みたいなお話


色んなニュースがあるけれど
すごいなーとかへえーとか なるほどと感心してみたり
言葉を失うようであったり

私はテレビをあんまり見ないのだけれど
毎日、朝食のパンを食べるときにパンくず受け代わりにしている新聞は
片端に書かれている事件まで目に入る

だけど朝はとても忙しくて感傷に浸っている場合でもないのだから
そそくさと天気予報に目をやって
入梅した天気の欄を見ては

アホ面で傘の有無を尋ねている

いちいちテレビをつけて報道陣の甲高い金切り声を聞くよりかはずっと
自分のペースを乱されずに活字が頭に入ってくる


その中で覚えた幾つかの出来事の概ねを
まるで御伽話かのように話しをする
友達に家族に恋人に 上司に親族に好きでもない人間に
笑止千万、盛者必衰
錦上添花、皮相浅薄

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ただ最近は毎日がとても早くて、帰ったら寝るだけのような生活だから
深く思想にふける暇もなく豚のようにに眠りつづけている
眠りに入る前の たった少しだけ残された考察のカケラは
ああ、明日は雨かなぁ


そうやって明日の新しい御伽話に ちょっとだけ胸中苦おしく
また、ちょっとだけ期待を持って
雨であろうと傘がなかろうと
親の機嫌が悪かろうと朝食の食パンが不味かろうと
ただ毎日天気予報を見て支度する

そうやって何を消費してるのかもしれないこの毎日は
朝起きるのがちょっとだけ辛くて
夜早くに眠ってしまうのがちょっとだけ心もとなく
ただ、毎朝20年以上も食べ続けている食パンを
相も変わらず口に放りこんで思うことがたった一つしかないなんて
いい加減愛想が尽きてしまいそうだとふと思った



新しい活字に触れては
特に意味もなく天気予報を見よう
傘を持っていくのを忘れないようにしなくては

さあ今日も新しい御伽話が作れそうだ

行かなくちゃ
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.06.21 「マウスピース」
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最近日がおちるのが遅くなって、眠る時間もそれにつれて遅くなった
毎日毎日4時間くらいの平均睡眠時間で
あたしの脳下垂体はたぶん ばくはつ すんぜん だ


仕事で関わってる歯医者さんが、虫歯ばっかりのあたしの歯をタダで見てくれて
君、歯軋りしてるでしょ  って歯見たらわかるとかなんとか
まるでそれこそ蛇の道は蛇

そこでマウスピースを作ってくれた
透明のゴムみたいなそのいびつな自分の歯の形
どうやらあたしは囚人みたいに口枷をつけて眠らないといけないらしい

でも、その歯医者さんにはわるいけどそれは今はもう必要ない
なぜかって歯軋りは今はしていない
週に一回、一緒に眠る人が言うんだもの
たぶん 間違いない


前、うちに来た友達が
あたしの部屋を見て、見慣れないものに目をキョロキョロさせては
イカれた部屋だね と言った
よくとっていいのか、悪い意味なのかよく分からなかったけど
だけどそれは多分あたしにとっての褒め言葉だ

キラキラしたシャンデリアに、クリスマスに家の周りを囲む為の使い方を誤ったLEDチューブ、
それにお気に入りの十字架の形をした照明は
一度に付けると電気代が高いからと母が飛んでくる
だけどそんな母の苦労も知らないであたしはうとうとと、ギラギラした中で眠りたいのだ

いつだって優しく時間を忘れさせてくれるそういったイカれた空間は
誰にだって必要でしょ?


毎日仕事へ向かうとき、眠くて眠くて 
今、横になったなら3秒で寝れるって思いながら電車に乗ってる
片目で読書にふけるサラリーマン風の人がどんな本に
夢中になっているのかを見ようともせずに
3秒で寝れるな とばかり考えている

だけどそんな車内の余暇は一瞬にして過ぎ去って
3秒で眠れるわけでもないのに口惜しく、その考えを取っ払っては
また重い足をその先へと向ける



帰りの駅までの道のりは
夕方になると、空のみずいろと電灯のオレンジが
とても上手に溶け込んでいて
それを見ているだけでいつも
3秒で眠る必要はなくなった

ギラギラした時の分別も付かない部屋で
もう使うこともないタダで作ってくれたマウスピースを見ながら
3秒で眠ることも忘れ ただ刻々と時間だけが過ぎ、
あっという間に睡眠時間は削られる

体は疲れているはずなのに、ここに居るとなんだかすべてが癒されて
そう思うとやっぱりこの部屋はイカれているのかもしれないな、と思った

そんな風にめまぐるしく過ぎる毎日に
どれだけ衰えて どれほどの消費があったんだとしても
あたしはとても満たされている

4時間しか寝てなくてもブッ倒れないんだもの

たぶん 間違ってない
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.07.05 「ちいさな王国」
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魂の中の祈りのように、君の言葉は僕の手の平にとどく

画風も雰囲気も全然好みでもないのに、
たったこのひとフレーズだけの言葉で買った漫画があってね、
やっぱりたいしておもしろいとは思えないような漫画ではあったけど、
この言葉に出会えただけでそれはもう十分に
その商品価値を超えている

あたしの家は物に溢れている
漫画にしてもCDにしても服にしても靴にしても、写真も雑誌もマニキュアもなんもかも
なんだか小さな雑貨やさんみたいだ
人に何かをプレゼントするのが好きで、すぐにあげちゃうのだけどなかなか減らない

たくさんのものに囲まれて、ああなんだかほっとするなぁ
買い物依存症もとい、こういうのを物依存症というのだろうか
収集家と呼んでいただけるのなら
いや、それなりに価値も見出せるだろうに


日本が地震続きだったとき、あたしは怖くて仕方なかった
3階部分を付け足しただけの細長いこの家は真っ先に崩れるだろう
いや、折れるかもしれん
だいすきな東急ハンズに行くたびに、
避難用サックを買おうか買うまいかで悩んだ
一体そんなナップサックにどれほどの非難力が備わっているのかも分からないけれど
備えにはなるのかもしれない 
頭の中で家に帰ると、周りを見渡して非難に必要なものをかき集めてみる

そこで少なくともこう思った
宝物はすべて置いていく


宝物はありすぎると手に負えない
盲目のうちに必死でかき集めるからいつの間にか自分の容量を超えている
あたしにはそれらのものを器用にまとめあげるだけの共用力も
活かすための活用力も、才能も、何も何もありはしない

地震がやってきて、誰も居なくなったその小さな囲いの中で
無残に散っていくだけのあたしの宝物たちは、なんだかとても虚しい存在に思える
主の居なくなった物達は小さなガラクタのようだ
運良く共に散ることが出来れば、一矢の報い
ただ朽ちることもなく静かに滅びるときを待つにはとてもじゃないけど
惜しいようなものたちばかりなのに

友達の誕生日会を開いたあと、朝までたくさんの話をした
ああもうすぐ夜が明けるなぁというところで
ただ布を切りっぱなしただけのカーテンから朝日が差し込む
赤ともオレンジとも言えるようなその暖色系の光は、眩しいくらいに強烈にだけど優しく
眠気でほとんど会話の巡回が出来なくなってしまった私たちの間を通り抜ける
どうしてあたしにはこんな力がないのだろう
その光は溢れるばかりのあたしの部屋を照らして、これほどまでにものたちを彩ってくれるのに、こんなに素敵な空間へといざなってくれるのに
宝物が自分の手中に収まるなどと何故思ったんだ?

あたしが使いもしないものを買うのは見てるだけじゃ不毛すぎたからだ
手にとって、感じて、それを知れば
その底知れぬ輝きをどうしても近くに置きたいと思った
その素晴らしさと、その存在感を周りにはべらかして、
ちいさな王国の主になりたかったんじゃない
たったそれだけで完璧に自己陶酔できるほど器用でもなかった

ただ近くにあるだけで、その素敵さが身に付くような、そういう思いがあったように思う

素敵な洋服を纏ったら素敵に見えるかしら
素敵な音楽を聴けば素敵に奏でられるかしら
素敵な本を読めば素敵なお話がつくれて
素敵なもので飾れば素敵に近づけて
素敵な物に囲まれて、少しでも多く素敵なものを見ていれば
素敵な、もっと素敵な人間になれるかしら
・・・・

見渡してみれば、同じようなものばかりが揃う
たぶんあたしの原点とかゆうやつがここにある


ひとつだけ、物を集めていてよかったな
と思うことがある
知れば知るほど欲しくなるものたちをバカみたいに集めるあたしは
深くものごとを知ろうとする人間になった
試行錯誤して少しでもそれらを活かそうとする思念が生まれた
その輝きの謎や、その深みにあるものをもっともっと見つめるようになった
そして何度も何度も見つめては
新しい良さを見出せるようになった

それだけでそれはもう十分にその存在理由を超えている
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.07.24 「姫ごと」
あたしの知り合いはとってもスタイルが良い

たぶん私をひとまわり超えるであろう年齢を、会話の内容で予想は立てられるけど
その姿からは見分けるのはむずかしい。

でもゴボウみたいだ。
とあたしは密かに思っていた。

手足が細くて長くて、細い胴体からスラッと伸びている。
間接なんかは今にも砕けそうで、華奢な体が美しく、羨ましくもあったんだけど、
なんでかゴボウみたいと思わずには居られないでいた。
もっと言えば、もしかしたらゴボウみたいな知り合いなんじゃなくて、
知り合いの顔をしたゴボウなのかもしれない。

そしてこれはもちろんここだけの話で
あたしはこの隠し事と、日記を守るためにも
絶対に彼女にこの日記を見られてはいけない。

でもそれは、ゴボウと言われたことで、
とんでもない仕打ちをされるのが怖いのももちろんあるんだけど、
ゴボウにゴボウと思ってることを知られることが可笑しくてしかたなくて
たぶんそういう意味でも
とてももう一緒に居れそうにはないから。


ある有名な小説家さんが言っていた
正しくは、その小説家さんが描いた女性が言っていたのだけれども、
それはたぶん小説家さんが言ってるのと同じだ
『動物と人間の違いって分かるかしら?
言葉も、知恵も、思考も、社会の秩序も、それぞれ程度の差はあっても、他の動物だって皆持っているでしょう?信仰だって持っているかもしれないわ。
人間はまるで他の動物と本質的な違いがないみたいでしょう?
ところがね、ひとつだけあったの。
それはね、
秘め事というものよ。いかが?』

なるほど、この小説家はなんと頭がよくて、なんとお洒落なことを言う。
これは昔考えたことがあったのだけれども、そういうセンスに乏しいあたしはとうとう答えをひねり出すことが出来なかったのだ。
罪の意識だとか、哲学だとか、自殺だとか言われるよりも、ずっとずっと納得できた気もした。

ひめごとか。
そう思うと心がワクワクする。

たぶん世に居る人間達は何かしらひめごとを持っている。
それが何を意味するもので、どんな価値があるのかも分からないけど、
それがなんだかとっても素敵なことに思えた貴方はきっと、
おとなのひとです。

隠し事はいけないよ、
そういうあんたも何かを隠してる。
隠し事なんてないわ。
そんな貴方も何か忘れてる。

そう考えるとニヤけてしまった私はど変態で、頭がおかしいのかもしれないけど
甘さが抜けて、酸っぱさのたしなみを少しは理解できるようになったのかな、と思った。

今思えば、隠し事が苦手だった。
罪の意識だったり、嘘で嘘を重ねることがなんだかとっても苦痛に思えても居たから。
だいたい幼稚園のときに水筒の蓋の開け方も分からなかった私が、そんな高度なテクニックを駆使できるはずもなかったし、
皆さんに言えない様な、もの凄いひみつを所持したこともなかった。
それにあたしはなんでもかんでも話したがったので、どれを話して、どれを話してないかなんてだいたいいっつも把握できなかったし、
もの覚えが悪いから、どうせすぐに忘れてた。

どんどんどんどん言えないことが増えてくる
どんどんどんどん独りぼっちになってしまう。

そうは言うけど、ひめごとっていうのはそうもののことじゃない。
言えるけど言わないから秘め事。
またそれを貴族のような気持ちで誇り高く、持っているのが姫ごと。
そんでもって初恋をしたときのように純粋で汚れないからひめごと。
自分の中で可愛がってあげれる程度のものがひめごとです。

それはもちろん自己満足だけど、とっても楽しい。

ひめごとがある人は、たぶん世界を二個持っていて、
そのひめごとを境に行ったり来たりが出来て、
ひめごとがバレそうになったり、誰かに打ち明けてみちゃったりすることで、そんな世界を覗かしたり、またもっと素敵なものに出来ちゃったり、
とにかく楽しいったらありゃしない。

今のあたしの秘め事、
スタイルのよい知り合いがどうしてもゴボウに見えるということ。

ああ、それだけで
もう考えるのが楽しいったらありゃしない。
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.08.02 「まだ踊れる」
「踊り出したくなるような気分だった」

と、隣に座ったおねいさんが言った。
もうひとつ隣の席のおねいさんが、「うん、うん、分かるよ」と言う。

あたしはうつらうつら、
電車の中で睡魔に襲われながら、聴こえてきた会話の意味や、内容も知らないまま、
それがいったいどんな踊りなのかを考えていた。

なんとくなく、その雰囲気や、その物腰から、いい踊りであることは間違いない。
間違っても、荒れ狂ったかのようにやけくそで激しいものではない。
バレリーナのようにしなやで哀しげでもないことは分かる。
残念ながら、そのおねいさん達の顔までは見ていないので、
その踊りを見て不快に思う人が居るのかどうかまでは不明だけれども。


ふと、さくらももこが描くような、頭に花を付けたじじいがサンバ風に出てきて、
僕みたいのだよ、と言う
意味不明に顔がニヤけてしまうのをこらえて、
こんな奇怪な登場人物を出してくるさくらももこの頭の中はどうなってるんだ?と思いながら、
違う違う、君はまた今度、
とおじいさんにサヨナラをしたら、

今度は、カルメン風のセニョリータが腰を振りながら あたしみたいなのは、どう?
と言わんばかりに情熱的にささやきかけてくる。
ははは。それもいいけど、たぶん違うよ。

踊りたくなるような気分のときの踊りとは、 踊りといえど、踊りではないのだよ。
誰かが言う。
眼鏡をかけて、かしこまった時のあたしだ。

そんなこと分かってるよ、と思ったところで、 駅に着いていた。

話の発端となった女性達はもう居なかった。
寝てしまっていたのだろうか、と思いながら、自分が踊ったときのことを思い出していた。


まだ3回生だったころ、毎日京都から大阪へ帰る道のりで、
市川さんところの家の前を通るのがあたしの通学路だった。
学校から家までは2時間近くかかったので、そこを通るときには大抵、日が暮れている。
ショートカットにもなるその道は暗くて、細くて、人通りも少なくて、
地元民しか知らないような下町の近道だ。

市川さんのところには犬が居て、そいつがあたしは大嫌いだった。
犬は人の気持ちが分かると言うが、その犬もあたしが大嫌いだったんだろう。
どっちが先に嫌いになったかまでは分からない。
だけどとりあえずそいつはあたしに嫌がらせをした。
疲れて、ああ、もうちょっとで家だ、 って気が抜けているときに限って、死ぬほど吠えられた。
真っ暗な道でたった一人で、それはもうビックリするので、
あたしはいつも悲鳴とも言えない低い声をあげては、ひどい時なんか、
あまりに驚いて鞄を遠くに放り投げてしまったことがある。
そいつは頭が良くて、隠れてたりなんかするからもう余計にビビった。
いつも、逃げ腰に お前、喰ってやるぞ、
などと犬相手に罵声を吐いては、満足げな犬の顔を見て、悔しさから、負け犬のような気持ちでたまらなかった。
明日こそは負けないぞ、とあたしは家に着いてからも、お風呂でもう一度腹を立てたりしていた。
そいつはよほど人間慣れしてるのか、大抵のことにはひるまない。
あたしがどれだけ怒鳴っても、どれだけ、柵にのしかかってやっても、
なんてことはない、といった風に牙をむき出したままで、歯向かってくる。

だからあたしは死の踊りを踊ってやった。
喰うぞ、と言っても分からないのであれば、
身振り手振りで、喰らわれてしまうかのような踊りをしてやった。
驚くことに犬はその踊りがたいそう怖かったらしく、
それをやってやればどれだけ威勢良く吠えていても、食い下がった。

その日からはあたしの勝利の日が続いたが、 あるとき、その犬のあまりに怯える鳴き声に、
心配して出てきた家主の市川さんに、 その踊りを見られてから、
もうその道は通らないことにしたし、その踊りは踊ってない。
(そして市川さんという人間はこの世に存在しなかったことにする)


その話でも、もう2年も前のことだし、 あれが踊りだったのかは不明だから、
そう考えると長いこと踊りというものに触れてない自分が居る。
ダンスなど、したこともないし、
クラブなんかに行ってもはしっこで、あまり飲めないお酒をチビチビやってるあたしは、
踊ることなど忘れてしまった。

子供のときなんかに、嬉しいことやワクワクするようなことがあると、
体全体でその喜びを感じることが出来た。
幼稚園の学芸会では正面で踊り倒して、
先生にこっそり「あおいちゃんが一番じょうずだね」と褒められたこともある。
踊ることが多分、だいすきだった。

アメリカ映画なんかでもよくある、嬉しくなると踊りだしてしまうような人種を見ると、今でも顔がほころびる。
だけど、今はそのやり方を忘れてしまった。

あんまり、感情を表に出さないように、冷静さをいつも欠かないようにしてきたものだから、
今いち、何を考えているのか分からないと言われてしまうこともある。
踊りたいくせに、何だか気恥ずかしい気がしていつからか、踊りというのはあたしの中で傍観するだけの、鑑賞するだけのものとなってしまった。

今、あの学芸会のシーンにもう一度立って、誰よりも元気に誰よりも楽しんで、
ましてや先生にじょうずだね、
なんて言われるような踊りを踊れる自信がない。
それは、なんだかとっても大事なものが欠けてしまったような気がする

あたしは踊りの才能なんて、その頃から全然なかったし、それを夢になぞらえたこともない。
ただ、踊るという感情は、あのおねいさん達の言葉にもあるように、どこにだってあっていいはずだ。

それがなくなってしまったのか、と思うと 情熱がぬけてしまった恋する乙女ぐらいグッタリする。
もし、あのときの先生にもう一度会って、 「あおいちゃんまた踊ってみてよ」 と言われても、
「先生、あたしもう23ですよ?」
と大人ぶって先生を哀しませてしまいそうな自分にゲンナリする。

だけど、たぶんあたしにだってまだあるはずだ。
踊り方を忘れても、心が弾むような、それだけで楽しくなるような、
それだけで人生がハッピーに思えもきそうな
そういう気持ちまで失くしてしまってはいけない。

そう思うと、なんだか今すぐにガムシャラに踊りたくなった。
ワケの分からない踊りで、死ぬほど息を切らしてみたくなる。
そうだ、あたしはいつだってこんな風に 自分で自分をまだ勇気づけられる。

自分は単純だな、と思いながらも、 なんだか胸が躍るような気持ちになってきた。



胸が躍るということで、それがどんな踊りなのかを考えてみた。
天プラをあげている時のように、ピチピチと何かが跳ねる感じのあれだ。

ださいな、 と思ったけれど、
もうちょっと色好い言葉なんかを足して
明日恋人に言ってみよう。
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.08.03 「tori」
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鳥だ 鳥が居る
名前をなんていう鳥かは知らない


今日は木曜日 だからあたしの仕事は質屋だ
あたしは月火金とウェブのほうの事務所へ行き、
水木と、週2日は家業を手伝いに質屋へ行っている

家から700mくらい離れた質屋は、かつての父の育った家であり、
今はおじいちゃんとその愛人と父が なんだかもう嫌になっちゃうよ、
ってな具合に暮らしている。

おばあちゃんはあたしが小学生のときに他界したから、
その愛人はあたしがおばあちゃんのことを知っている年月をもう悠に越えていて、
元クラブのママで、スタイリストなんかをしていたときもあったらしいから、
成人式のときの着付けなんかはその人にやってもらった。
若い頃はきれいだったのかもしれないけど、 今は怪物みたいな顔だ、
と、おとうさんは言っている。

まあ、だからそういう具合に、 なんだかもう嫌になっちゃうよ、というワケだ。

今日は別にその、なんだか嫌になっちゃうよ、の矛先が向けられたわけでもなく、
別にそんなことは毎日のことで関係もないのだけど、
お父さんにグーでどつかれた。

宝石の撮影をしていたら、石がひとつ取れていることに気付き、お父さんに言う。
そしたら、お父さんはそれを洗いにかけるときに落としていたようで、
仕方がないからくっつけようということになった。

宝石品を多く扱う質屋と言えど、別に宝石の専門店でもなんでもないので、
そんな場合に石を取り付けるような専門的な道具なんてなく、
宝石のリフォームなんかは古い知り合いの宝石屋のおっさんに頼んでいるぐらいなので、
アロンアルファーがこのときの手段であった。
しかし、くっつけたのはいいけれど、お父さん、石が曲がっている。
では私がやろう、ということになり、
鑑定用の顕微鏡を覗きながら、針の先にアロンアルファーを付けてチマチマやっていた。

お父さんが横から口出してくるのがうるさくて、 それは「そんなところでやってたら落とすぞ」
とかそういう注意みたいなものもあったのだけれど、
何しろあたしは真剣だったし、またその石が3mmもないくらいの小っさいオニキスだったから、そんなもの、と思っていた。

なかなかうまく付けられなくて、イライラも頂点に達し、伸ばしていた爪でオニキスをくすませてしまったアロンアルファーを削っているとき

一瞬の出来事だった。

飛んでいるところなんて見えやしなかった。
何か虫とかそういう生き物がフッと自分の横を通りすぎたかのようなそういう感触だった。
もし、そのとき今日の晩御飯は何かな、
みたいなことを考えてたりしていたら、気付かなかったくらいの速さだった。
恐る恐る自分の指を開く。
手品師が何かを入れ込むように指をいじいじする。
そこにはついさきほどまで、確かに手品師の指の中に存在していたものが、
指越しに煙のように消えてしまっているのが分かる、
そんな感覚だ。

手品ちゃう?
と言うとブッ殺されそうだ、と思ったので、
何のつもりか自分でも理解に苦しむような気だるさと冷静さを表現しながら、正直に言う。

だけどそんな小さなものが、こんな雑多な場所で見つかるワケもなく、
そこに居た全員は暑さと、何だか嫌になっちゃうよ、ってな気分と
余計な仕事を増やされた怒りで、罵りあって大喧嘩になった。

特にお父さんが、関係ないお母さんまで巻き込んで、やたらめったらに暴言で責めてきたので、あたしはだんだん腹が立ってきて、 元はといえばお前のせいじゃないか、
なんていう風に、理不尽で不道理に子供みたいな理屈で、苛立ちを露わにしていた。

そうして、もう仕方ないじゃないか、
というお母さんの冷静な意見で、場の空気も少し静まり、
椅子に腰掛けて、煙草でも吸おうとしたとき
鈍い音の後、私は体が大きく前へ突き飛ばされたかのような姿勢になり、
火を付け様としてい持っていた煙草が床にポロリと転がった。

背中の痛みと、頭がそれを理解するにさほど時間はかからなかった。
グーだ。
お父さんにグーでどつかれたのだった。

半狂乱しそうになるぐらいに、あたしは腹が立って、大きく心が揺さぶられ、
背中はまだヒリヒリ痛むし、心臓はバクバクいっている。
「なんで、どつかれなアカンねん!!」

と大声で立ち上がって叫び、思い切り父親の顔を睨みつけて、
何かそれに続く言葉を探したけれど、
睨みつけただけで、また思い切り座っては、傍にあった煙草にもう一度火を付けて、
もう味も分からなくなった感覚のまま、その一本をすごい速さで吸ってはすぐに消した。

殴られることは初めてのことではなかった。
私にはそれよりもこわい兄が居たし、一緒に暮らしていたころは父親からも何度も経験がある。
だけれど、あまりに久々のことだったので、 もちろん動揺もしたし、腹が立ちすぎて、
お母さん、こいつと離婚して正解だよ、 とかそういう子供じみた気持ちで怒りをグッとこらえた。


その後、静かだけど、皆やりきれない怒りを胸に秘めて仕事を続けていたときに、
あたしは小さくお父さんに謝った。
その後に、だからお前も殴ったことを謝れ、と言いたかったのだが、言葉はそこから続かず、
向こうは得意げな風に何やら、経験論とかいうものを説いてはいたが、
顔が少し穏やかになったのが分かった。


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そしてそんなことがあった後、ひととおりの仕事を終えて
帰りに近所のスーパーに寄ったところで

鳥だ
鳥が居る

最初に目に入ったのは、ありえないくらいに下品な色合いで装備されたチャリンコで、
それに動物が紛れ込んでいることに気付けなかったけど、何かがギャーと鳴くのが聴こえて
あたしは近くに寄ってそのルンペンカーを覗き込んだ。何か生き物がいる。
鳥だ。

オウムの一種だろうか?
よくペットショップなどで見たことはあるが、こうやって柵を越えて、
間近に存在したのは初めてだった。

鳥は足に紐も何も付いていなくて、ただそこに留まっている、という感じで、何やらギャーとか人間ぽい発音とかを度々発している。
あたしは途端に嬉しくなって、持っていたデジカメで、スーパーにお菓子を買いにきたことも忘れて、パシャパシャ鳥を撮っていた。

後ろから声がして飼い主が買い物袋を下げて、立っているのに気が付くのに少し時間がかかってしまい、少し恥ずかしかったのだが、
あの大袈裟なチャリンコでこんな放し飼いのような飼いかたをする鳥の飼い主はたぶん、
浮浪者か、ピエロぐらいなものかと思っていたけど、
立っていた男性は至って普通のおじさんで、歳はちょうどお父さんと同じぐらいにも見える。

おじさんは、あたしが鳥に興味を持ったことがとても嬉しかったのか、
鳥の話をしているときは、その丸い顔にとっても満足そうな笑みを浮かべていた。

ひととおり鳥の話を交わして、あたしはスーパーに寄るのも忘れて、
チャリンコで家に向かう。
その途中で哀しさがこみあげてきた。

おじさんはとても優しくて、ちょっと変わっていて素敵だったし、
鳥も可愛いくて、楽しい時間が過ごせたのだけれども、
おじさんの袋からは、スーパーの袋に大根とか、そういう惣菜になるものが見えたことが胸にひっかかった。
こんな時間に、あの年齢でそんな所帯じみた姿がどういうことを意味するのかを、
ちょっと深読みして、とてもとても哀しい気分になった。
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そして晩御飯に家でそうめんを食べた。
食卓はこの何年間、お母さんと二人だ。

お兄ちゃんは東京で、 働きながらたぶんまだ晩御飯を食べていない。
あの人はご飯なんか食べなくてもやっていけそうな気がする。
そして、お父さんは今日も一人でご飯を食べているんだろうか。

スーパーでお惣菜とかを買っては、若い子に感傷的で、
悲観的な目で見られていたりするんだろうか。

こういう気持ちをなんていうのかあたしには分からない。 家族愛とでも言えばいんだろうか。
それとも情か、はたまた愛か? どれもピンとはこない。
どれも薄っぺらいような気もした。

だけど、あたしはあの家には住めない。
おじいちゃんとも、その愛人とも、なんだか嫌になっちゃうよ、
ってな生活具合を味わいたくもない。
毎日ご飯を一緒に食べに行ってあげることも出来ない。

だから、お父さんにもあんな鳥のようなものが居ればいいな、と思った。
お父さんの愛する二匹の猫が、あんな鳥ぐらいお父さんを楽しませてくれるといいな、
と 思う。

そしてあのおじさんに、聴いてあげれば良かったな、 と思う。
おじさんの家族みたいなその鳥の名前を

次にもし会ったら、真っ先にその名前を聞いて、
また、鳥のウンチクとやらを教えてもらって、そして何度もありがとうと言いたい。
おじさんは、その意味が分からず変な顔をするんだろうけど。
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
2006.08.07 「打ち上げ花火」
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激しい爆発音で胸が切り裂けそうになる
心臓はドクドク音を鳴らしていて、 自分がそれに大層ビビったのを教えてくれた。

土曜日は十三花火大会で、
今年は祭りなんていけないだろうなぁ、と思っていた私に 舞い込んできた朗報は、
私の気持ちをとても嬉しくさせた。

誘ってくれたのは、世話になっている方々。

それがなければ、花火など来年へと いやはや、再来年へと、持ち越しであったはずだった。
それに、私が舞いあがったのは言うまでもない。


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私は女郎みたいな浴衣を買った。

それは、渋けたピンク色に、真紅や紅色、
オレンジ色の花が これでもかというほどに
下世話に散りばめられたもので、
親から引き継いだ紫陽花の薄紅色の浴衣が、
気に入ってなかったワケではなかったのだけれど、

そこはまあ、女の性とでも言おうか、
衝動という名の、魔のあいつだ。




それが最初に見えたのは、工場のようなのっぴきならぬ建物から車を停めて、
それにもっと近づくために歩いている最中だった。
ありえないくらいの爆発音と共に、空がパッと色付いて、気持ちを紅潮させる。
人々がワァッと歓声をあげる。
私は一瞬で、言い表せないほど解放的な気分へと、導かれたが、
その衝撃音に体が強張って、まだ身を任せられないで居た。

横に居る人が、「爆発音みたいだ」と言う。
続けてヒソヒソ声で「戦争かもしれない」と話しかけてくる。

それもそうだな、と思えたので、
「怖いな」 と正直に
その美しさに身震いしたら、なんだか楽しくなってきたもんだから、
私はこの人のこういうところが好きなのかもしれないな、と心で小さく思った。

そして鳴れない鼻緒が一層に身に喰い込んで、 だんだんと目的地に近づいてきたころ、
雨のような渇声にも慣れて、 美しさだけが身に入っていった。

これほど大きな花火を見たのは、確か、8つか9つのとき以来で、
キラキラ舞い落ちるその金粉を眺めて 昔から思うことは同じで、
あれの正体は何だろうと、 相も変わらずくだらないことを考えてはみたけれど、
それが分かるわけもなく、ちょっとくたびれたので、ただひたすら
崇めるかのように花火に見入った。

周りを見渡すと、数え切れないくらいの人が 呆けた様子でそれを眺めている。
多分、花火から見たら、鳥肌もんだろう。
そして、もちろん私もその一部であることが、 うっとおしくもあり、笑けた。

ふと、隣の人に目をやる。
周りなんておかまいなしなほど、自らの世界に入り込んでしまっているようだ。
その顔が、光が入り込むたびに、目がキラキラ輝いているようにも見えたので、
私は、 もしかしたらまだ戦争のことを考えているのかもしれないな、
と決め付けて、
ばかめ、と思った。

そこで
”貴方さえ、綺麗に見える、花火かな”

と一句詠めてしまったのだけれども、
おっと、これは言われるべきじゃないのか? なんて台詞が頭をよぎって、
自分が選んだド派手な浴衣が、逆に貧相にも思えてきたので、あえなく終了です。

そうしているうちに、激しい連発がやってきて、より一層感度が鈍る。

花火があがっているのは、だいたい一時間ぐらいだそうで、
いつまでたっても、その辺が曖昧なのは、 あの激しい音にリズムなんて刻めやしないからだ。
あがっている最中にずっと、いつか果てることばかり考えてしまうからだ、
などと思ってはちょっといじけてみた。

花火がうち上がることを、 何かをやり遂げることになぞらえる人が居たけれど、
たぶん、その人だって 燃え尽きてしまうという点において。
なんて共感、求めてやしなかったと思う。
だけどいつも花火が終わってしまうと、やるせなくって、虚しくて心がからっぽになってしまう。

あがっているとき、あれほど心を満たしてくれているはずのものは、
胸の中を大きくしてくれたぶん、喪失感がやたらとデカい。

だけど、胸を満たしてくれるものは、いつだってすぐそこにあって、
そいつらを全部おざなりにしてまで、手にしたものなど有るに足りない。
わたしはそうしてまでその感動を手にしたいとは思わない。

そんなことばかり考えてしまうから、 花火はあっという間に終わってしまった。

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そして、もう一度横に居る人を見つめたら、 とっても愛ある表現のつもりだったのに、
怪訝そうに 何なん?
と言われてしまった。
なんだよ、ムカつくな
といつもなら、殴りかかってしまいそうなシーンだったけど、
花火が終わってしまったので、 含み笑いをしておいた。

その後、ずっと私の相手をしてくれていた人と、たくさんの話をして、
あたしは久しぶりに、人にたくさん話が出来た気分になって、
舞い上がってた分、とても饒舌とは言えなかったけれど、
花火があがっていたら、その音でかき消されてしまうようなそんな話が
祭りの後に出来たのがとっても嬉しかった。


恐れるものが何ひとつ、ない
それは大層美しいけど、
ガムシャラに生きることこそ我が道と、
それは大層格好いいけどさ、
何だか忘れてやしないか、ねぇ?

そんなことをふと思ったので、
女郎みたいな浴衣をクリーニングに出してしまう前に、
10代の自分に教えてあげたい気分である。
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by aoi-ozasa | 2006-01-01 00:00 | 2005-2006
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