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2008.05.26 『東京旅行』

23日の金曜日、仕事を早々に片ずけて
恋人に会いに京都へ

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五条鴨川沿いのefishというカフェに連れていってもらい
そこで遅めの夕食をとった後、四条まで鴨川沿いを歩きました。
鴨川沿いは少し蒸し暑くて、橋の下の家ともよべない居住地が風にさらされるビニールシートの音や
謙虚な若人たちの集いや蛙の鳴き声や、様々な音を聴きながら延々と。
京都で学生だったとき、鴨川は何度も通ったけど
こんな風にして誰かと歩いたのは初めてで
夏を予感させる湿度を含んだ風がわりと気持ちよく。

茨木に着いて近くの公園で生まれて初めてホタルも見ました。
まだ数匹だったし、思ったよりも小さかったその光は
なにかとても弱弱しくて
きれいだったから尚更、
触れてはいけないような気がした。
ピアノ線のような細い線の上にかろうじて並ぶ小さな水滴や
真っ白なケーキの上にそびえ立つ繊細な飴細工のように
ほんの少しの呼吸で壊してしまえそうな

誕生日に立てられたロウソクを、めいっぱい吹き消すように
世の中にはいっそ破壊してしまいたいものが山ほどあるけれど、
少なくとも私は、
大切にしたいものとそうでないものの
扱いくらいはわかる。
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土曜日、予定より一時間ほど遅れて新幹線に乗る。
この日、日本各地はほとんどが雨で
なんだかなぁとは思いつつも、発車前にエビ天むすびとやらに舌鼓み。
幕の内弁当はなぜ、幕の内などという保守的な名前が付いているのか
わけがわからないけど
どっちにしろ私は食べたくもないおかずばかりだなぁと思う。


ホテルで荷物をおろした後、
新宿にあるワコウギャラリーでティルマンス新作展『Lichter』を見る。
小規模な展示ですごい雨にもかかわらず、何人か人が居る。
もはや写真ではないティルマンスの新しいスタイルの作品から、
何かとてつもない芸術が爆発するんじゃないか、
などとしわくちゃの作品に自分を写してみるけど
数秒も見てると
頭の中で般若心経が聴こえてきたので結局相容ることができなかった。

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ティルマンスは夜に行った六本木ヒルズ内の森美術館
ターナー展にある作品のほうがずっと好きだった。
自分にはたいそうに評論できるようなものもないし、
閉館間際で急いで観たからあれだけど
ダミアン・ハーストの有名なホルマリン浸けで分断された牛のやつは
もうとにかくインパクトがあるし
自分が鎌鼬になったような気分になれるのでおすすめでした。
時間がなくて村田朋泰の展覧会に行けなかったのは残念だったけど
恋人のご友人たちにもお会いすることが出来(さらさなくてもよい恥もさらし)
この日は一日いろんな東京を見れて満足でしたのです。


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25日、朝から上野の森美術館
とても楽しみにしていた井上雄彦 最後のマンガ展。
バカボンドで描かれる武蔵のサブストーリーが
書下ろしによる漫画とインスタレーション的な展示、そこにある全ての空間を使って表現されていた。

並列されたページはいつしか、フレームを突き破って
線は壁を這い、空気を蔦って
その目撃者はいつしか漫画の中に入ったような気分になる。
視聴者という壁を越えて
決して描かれることのない自分までもが
いまそこに関わりあってきた登場人物と並走して
彼の中に自分を感じ、また自分の中に彼を感じる。
「あなたが、最後に帰る場所はどこですか?」
改めて問いただされる呼びかけに
これまで本編が織り成してきたストーリーが喉の奥を締め付けて、
鋭利で獰猛な野心家の火、かつて鬼子とさえ呼ばれたその瞳の中には、
これまで描かれなかった心までもが。


剣を持つということと、それを置くということ
わたしたちの生ける世界の視点でさえ、
誰かに出会い、深い感動を知り、
また誰かと別れ、それでも自分が生きながらえる意味を問い
破滅して生み出して、そうやって自分が世界と関係していくこと。
世界が自分と混ざり合って
断たれることのない繋がりをつむんでゆくこと。
繋いだ手から伝わるやわらかい体温のように
いのちのラインはどんな人間にも結ばれている。
でもそれはきっと見たい人にしか見えないんだろう。

嗚呼でも今ここに、
どんな人間もが背負い、背負いきれない生と死に
濁され、ゆらめき、響きあう心が。
手のひらからこぼれ落としていった大切な結晶が改めて一つの形を織り成し、
許諾と慈愛に満ちた光の中で
矜持を失うこともなかった
その心までもが。

目をこらせば
きっと、あなたにも見える。


私は展示で泣いたのは初めてだし、まさか自分はそこまで感受性豊かでもあるまいし
普段から、耳から入る感動に比べて、目から入る情報というのは
どうしてこんなに自分と距離があるのだろうと思っていたけれど、
まさにそれを突き破られた日であった。
遠い日に死んだ人が、現在を生きる人間の手によって
また新しい生き方を得る。活かされかたを知る。
しょせん、描かれた漫画だったとしても、人々の理想にすぎなくても
そこにはひとりの人間が生きた軌跡が間違いなく記されている。
今一度井上雄彦という一人の描き手に拍手を送りたい。
貴方も見たほうがいい。
これはもう、本当に。 忘れがたい、経験だ。


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上野公園をしばらく散策して、科学博物館にも立ち寄り
友達とおちゃをして新幹線で大阪へ帰る。
短い東京旅行は足元にものすごい疲労感と、
胸に柔らかい満足感を乗せて
あっという間に今週がはじまる。

新幹線の中、横で何かにとり憑かれたかのように
一心にペンを走らせる恋人を尻目に
ただ景色を眺めていた。
どことも知れぬ街並や田んぼが視界を通り過ぎて
これまたとり憑かれたかのようにシャッターを数枚切った。
高速で動いている車内の中からだからほとんどがブレてしまっていたけど
その中に何枚か、景色が認識できるものが手元に残る。
被写体もくそもないなんてことない景観。
でも世界に一枚しかないにちようびは、
都合か不都合か全てを記憶しておけない私に
まるで足早すぎる一週間の中からピックアップされた記憶が手のひらに刻まれる。
そしてそれらは、わずかながら自分が手にしてゆける思い出のような形をして、
これからもまた
何かと繋がってゆける奇跡を待っているのだろう。

いずれまた、こんな日を作っては写真をとって
また違った世界に一枚が出来、
少しずつ
こんな風に自分は、すばらしい出会いと、世界との縁に感謝の念を忘れない。




あーしかし今日はいい天気ですな~
と思ったら雨か。
あっついし、ねむいし仕事する気力がつづきません。
皆様もおつかれさまです。
今日は仕事おわったら江戸落語みてきます。
てやんでーばーろーちくしょー
(関西訳:なんでやねん、アホかボケが)
↑江戸落語のイメージ
by aoi-ozasa | 2008-05-26 14:12 | Daily life
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25歳なりました。日記は長いです。覚悟してください。
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