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2006.11.16 『スピードにのる』
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小学校のとき
------なんでこんな夜中に小学校のときの自分が出てくるんだ?それはまぁいい。

 小学校のとき
 マラソン用紙というものがあって、朝の授業が始まる前にマラソンをしなければならない、
 といういかにも健全なしきたりがあった。
 しきたりと言えど、走る距離は個人の自由なので、
 走った分だけ自分で色を塗って、先生にそれを見せればいい。
 勿論ズルしたってかまわない。要はバレなきゃいい。バレなければ。
 だけどあたしは毎日物凄い距離を独りで走ってた。

 毎日毎日走り続けて、マラソン用紙がクラスでもいつも一番で、
 別に一番になりたかったわけじゃないけど
 思えば、あのとき初めて走るということを知ったんだと思う。
 毎日まいにち早起きして、誰も居ない校庭を、それも100m足らずのトラックを
 ぐるぐるぐるぐる廻り続けるだけのこの作業がなんの為だったのか。
 それを今更知る術はないが、たぶんそれぐらいしかなかったのだ。

中学生になって
-------この頃の記憶は幾つになっても鮮明で、いつになく狂おしい。

 走らないことを覚えた。
 あれだけ毎日走ったのに、学年で1位はとれなかった。

-----やっぱり一番になりたかったのか?いや、違うね。でも苦しくなったんだと思う。

 友達とベラベラ喋りながら、体育教師にすごんだ目で蔑まれながら、
 ダラダラと歩くようにトラックを廻る。
 だけど時々は独りで走った。もう前のように速くはなかった。

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外に冷たい木枯らしが吹く
早く家へと帰りたいのに自転車を忘れた私は小走りだ。
ヒールが磨り減っていくような、また地面を打ちつけているかのような不気味な音が響く。
すれ違う人が見ている。
それを私も見る。
早く家に帰りたいのにそんな余裕なんてどこにあるんだよ、
と思いながらも一瞬にして過ぎ去っていく一期一会を、まるでミュージックPVによくある
スローモーション効果のように、脳裏に書き留めてゆく。
外は、雨が降っていた。
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マラソンという競技を孤独だと身に沁みて知ったのは、中学生のころだ。
小学生の頃、独りで何週もトラックを廻り続けていた私に、孤独ということはなかった。
ただ、自分の行く先を見て、抜かす人の肩を捉えて何週だって
時間の許す限り走り続けることが出来たんじゃないかと思う。
まるでそこには初めから自分しか居ない。

中学に入って誰かと走るということに慣れたときにこそ、その孤独はやってきた。
ときどき独りで走るときに、何度かいつものように集団で走るクラスメイトを追い越した。
追い抜くと、がんばってるなぁと後ろから声がする。
見学で休む人たちが、突然本気で走り出す私を不思議そうに見ている。
長いブランクに衰えた私の肺器官は、その激しい運動に耐えることが出来ず、
痛みすら感じそうなほどに曇ってゆき、腕や足は、もう自分のものじゃないみたいだった。
クラスメイトが笑っている。
見学者たちは時計を眺めながらあくびをしている。
足がもつれる。何もないところに少しつまずく。誰か肺を取り換えて欲しい。
その誰にもそれを伝えられない

そのときに初めて、走ることは孤独だと知った。

同じ時間を同じ弧を描きながら走る人間たち、
その誰にも同じような苦しさがあったとしても、その誰もが、それが分からない。
その誰にも、その苦しさは分け合えれないからだ。


さて、外は雨がやみそうだ。
自分なりに高速回転のモーターを緩める。
膝が笑うとはこういうことか、と思えるぐらい膝がガクガクだった。
体は思ったより濡れてなくて、信じられないくらいに家には早く着いた。
その日、大阪は雨がふったりやんだりを繰り返していて、
もしかしたら、あの頃のクラスメイトたちもどこかで走っているのかな
と思った。

走ることは孤独で、走ることは結構つらい。
だけど、その分かち合えない痛みや苦しさを同じように抱える人達が居て、
そんな人たちが、それでも走り続けているのかもしれないと思うと
信じられないくらいに勇気が出る。
それは同じくらいにスピードを合わせて、
隣で走り続けてくれる誰かが居ることの安心感とはまた違うし、
初めから一人で走っているような気で走り続けられるときの感覚とも違う。
ただ、そんな亡霊を感じるだけで、信じられないくらいに力が湧いてくる。

まだ走れる、と自分に言い聞かすことだって出来る。

スピードに乗って
いつだって全力疾走できる。
走れ。
by aoi-ozasa | 2006-11-16 21:35 | Daily life
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